大切な方の死は、悲しく喪失感からぼう然となってしまいますが、感謝の気持ちを込めて故人を送りたいものです。ただ、葬儀は日常的なものではないため、よく分からず、特に費用について、そのときになって「お金がない」と慌てるケースが見て取れます。
あまり考えたくないものですが、葬儀に関するおおよその金額、費用が払えない場合の対処法、事前にできることについて紹介していきます。
葬儀代はいくらかかるのか?
葬儀を行う施設や人数、形式により、また選ぶランクによって金額は大きく異なります。盛大に送りたいという遺族もいれば、家族だけで静かに送りたいという遺族もいます。
目安となる金額について知るとともに、我が家の場合はという観点で考えてみましょう。
葬儀費用の相場
平均的な葬儀費用は、経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」によると、約112万円(2022年度売上高と件数より1件あたりの金額を算出)です。
葬儀にも、僧侶による読経など宗教的な儀式を指す場合と、生前に故人と関係のあった方が最後の別れをする告別式や火葬までの一連の葬送儀礼の略称である場合などいくつの捉え方があります。
葬儀費用には、逝去(病院へのお迎え等)からお通夜、葬儀・告別式、火葬に必要な物品、人件費といった一連の葬儀社が関わる費用が含まれ、通夜振る舞いなどの飲食接待費、寺院・僧侶へのお布施は入っていません。
参考までに、飲食接待費が約20〜30万円、寺院費用が約20〜50万円が相場といわれています。これらの葬儀費用、飲食接待費、寺院費用をすべて含めると、150万円〜200万円程度が目安となるでしょう。
香典、香典返しなどの相場
香典には、故人への供養及び故人を送るための儀式費用の負担(助け合い)の意味がありますので、香典の金額は、年齢や故人との関係性により異なります。
受け取った香典に対して、一般的に半返しのお礼をする風習が「香典返し」です。香典返しや葬儀社などへの支払いなどを踏まえると、持ち出しになるケースがほとんどで、手元に残る金額はないと考えておいた方が良いでしょう.
葬儀費用は誰が出す?
葬儀にあたって、喪主は、故人の配偶者(夫や妻)か長男が務めるのが一般的でしょう。葬儀の責任者を「喪主」、葬儀のお金を取り仕切る役目を「施主」といいます。
喪主に経済的能力が不足している場合や負担額が大きい場合には、他の親族が援助することもありますが、喪主と施主は兼任することが多いようです。
また、故人の預貯金や保険の死亡給付金などから支払うケースの他、故人が生前に相続人と葬儀について合意や契約をしていた場合には、指定された人が葬儀費用を負担します。
お金がない!払えないときの対処法
いつ起こるか明確に予測できないのが人の死というものです。きちんと送ってあげたいものですが、葬儀費用は意外と高額になることが多いため、急な出費に戸惑うことも多いことでしょう。払えない場合の対処法を紹介します。
自治体による葬祭扶助制度
自治体では、生活が困窮して葬儀費用がない遺族を対象にした葬祭扶助制度があります。
生活保護法18条で定められた制度であり、制度を利用できるのは、遺族が生活保護を受けているうなど葬儀費用を支払う資産や収入がない場合に限られます。故人の住んでいた市町村役場に葬祭前の事前申請が必要です。葬儀後の請求は認められません。
故人に遺族がおらず、かつ故人に葬儀費用を賄える遺産や遺留金品がない場合も、葬儀を行う民生委員などによってこの制度を利用することが可能です。
市民葬・区民装を利用する
自治体によっては、割安で設定されている「市民葬」「区民装」で行うという選択肢があります。
利用するためには、故人もしくは喪主の住民票があることなど要件を満たさなければいけません。各自治体により設定の有無や要件は異なるため確認が必要です。
一般的には、自治体と提携する民間の葬儀社が執り行います。費用負担は抑えられるものの、決められたプランの中で選択肢が少なく、内容が不十分な場合や、オプションを追加したことで想定外に高額になってしますケースがあるようです。
あらかじめどのようなプランがあるのか、どのような葬儀にしたいのか確認しておくことをおすすめします。
健康保険の給付金
故人が加入する健康保険によって「葬祭費」「埋葬料」など名称は異なりますが、葬儀屋埋葬の補助として受け取れる給付金があります。
故人が国民健康保険(国保)等もしくは後期高齢者医療制度の加入者だった場合に給付される「葬祭費」は、葬儀終了後2年以内に自治体の窓口にて手続きが可能です。
自治体によりますが、30000円〜70000円が喪主に対して支払われます。お通夜や告別式を行わず、直葬や火葬のみの場合は葬祭費の給付対象外とされる場合がありますので注意が必要です。
故人が協会けんぽや健康保険組合など社会保険の加入者であった場合は、「埋葬料(埋葬費)」が給付されます。
被扶養者や同一生計の家族が申請する場合には一律50000円の埋葬料、それ以外の埋葬を行った方が申請する場合には50000円の範囲内で実費(埋葬料)が支給され(健康保険法第100条)、申請期限は死亡から2年以内です。国家公務員共済組合も埋葬した方に埋葬料が支払われます。
埋葬ローン
葬儀社への支払いについては、提携する金融機関でのローン組みや分割払いが可能な場合があります。
また、通夜振る舞い等の飲食接待費、寺院や僧侶へのお布施のほか何かと出費が重なるため、手元資金として確保したい場合には、カードローンや多目的ローンの利用も選択肢のひとつです。
金利が高いことは気になりますが、健康保健からの給付金を受け取るまでなど「つなぎ資金」として短期間での借り入れであれば利息負担も抑えられます。ただし、新規で申し込む場合は審査に時間がかかる可能性があることも知っておきましょう。
いずれにしても、借入金額や返済のよてい(計画)をきちんと検討することが大切です。必要以上の借り入れは極力避けるよう心がけましょう。そのためにも、予算にあった葬儀プランなどを検討したいものです。
クレジットカードの分割払い
最近ではクレジットカードが利用できる葬儀社が増えており、支払いの先送りや分割にすることで、葬儀時の負担を減らすことができます。
ただし、寺院へのお布施には現金が必要な場合が多いこと、あらかじめクレジットカードの限度額を確認しておくことが注意点です。
故人の預貯金
故人の預貯金も使える場合があります。原則として、口座名義人の死亡により口座は凍結されますが、2019年7月より民法(相続法)が改正され「預貯金の仮払い制度」がスタートしました。
そのため、遺産分割前でも家庭裁判所の判断を待たずに、故人の口座から150万円を上限に引き出すことができます。故人の除籍謄本および窓口に行く相続人の戸籍謄本など、必要書類は各金融機関により異なりますので、あらかじめ問い合わせや確認が必要になります。
なお、故人を被保険者とした生命保険に加入している場合には、受取人に指定されている方は死亡保険金を受け取ることになります。
保険金については、落ち着いた後にゆっくり整理したいという方が多いかもしれません。ただ、最近では各保険会社とも請求から支払いまでのにあ離、葬儀費用に充てることが可能性があるので、保険会社に問い合わせしてみましょう。
葬儀の規模を縮小することも検討
故人のこれまでの業績や働き方にもよりますが、参列者の絞り込みや葬儀プランを見直すことも選択肢のひとつです。
最近では、家族・親族のみで送る家族葬や通夜を行わない一日葬、通夜も葬儀・告別式もせず火葬のみを行う直葬など、シンプルな葬儀形式を選ぶ方も増えています。
家族葬は、食事代や会葬礼品などの費用を抑えられるとともに、お花代や装飾費用など幅広いバリエーションの中から選ぶことが可能です。家族葬の平均費用は、通夜・告別式のある2日葬は55万円〜80万円、1日葬は約40万円〜60万円が目安といわれています。
葬儀を行わず火葬のみを行う
葬儀を行わず火葬のみの場合には注意が必要です。火葬は、死亡後24時間を経過していないと行えません。しかし、基本的に病院や施設では亡くなられてから一定時間以上、遺体を安置しておくことはできないのです。
事前に安置する施設とその費用、移動手段について確認しておく必要があります。
葬儀費用を抑えるために、事前にできる対処法
そのときに慌てないためにも、また、葬儀費用を抑えるためにも、生前にできることがあります。遺された家族や親族に負担やトラブル回避のためにも、できる範囲で準備をしておきたいものです。
生前に葬儀保険に加入しておく
「葬儀保険」は、ご自身の葬儀費用に備えるための保険です。死亡時に支払われる死亡給付金を葬儀代として一般の生命保険で備えるケースの他、契約期間が短く保障内容を葬儀費に限定した少額短期保険があります。
少額短期保険の葬儀保険は、「高齢でも加入しやすい」「目的や支払事由が限定されるため保険料が割安」「保険金の支払いが早い」などがメリットです。
ただし、加入していることで安心してしまい、実際には給付される保険金額がわずかで、結果的に足りなかったという事例もあります。葬儀費用の適正な見積りやプランをきちんと検討しておく必要があるでしょう。
複数の葬儀社から見積もりを取って比較しておく
希望に合った葬儀、遺族が納得できる葬儀を行うためには、複数の葬儀業者から見積もりを取って比較検討しておくことがおすすめです。
プランや金額を知ることで、本当に自分が望む葬儀の形や妥当な葬儀費用のイメージづくりが可能となります。比較に関しては、人数や料理、返礼品などの費用について前提条件を統一しておくことがポイントです。
また、追加費用の有無や項目などについてもきちんと理解しておきたいものです。
生前のうちに互助金に加入しておく
互助金とは、毎月1000円、2000円など一定金額を積み立てることで少しずつ葬儀費用を準備し、その時の負担を軽減することができるシステムで、一括でまとめて払い込むことが可能です。
保険と混同されがちですが、現金でなく、プランに合わせたサービスを受けるという点で異なります。
互助金の会員であれば、会員価格で葬儀を行うことができるほか、日常生活におけるさまざまな会員特典を利用することも可能です。ただし、希望するプラン以外の選択がしづらくなります、
積立額が目標額に満たなかった場合には、葬儀の際に不足額が請求されるなどの注意があります。
なお、プランや解約手数料について理解しないまま安易な契約からトラブルに発展するケースも見られるため、家族での情報共有が大切です。
まとめ
大切なのは葬儀にかける金額ではありません。遺族の故人に対する思いが何より大切です。また、故人のこれまでの人生や意志を踏まえた送り方を考えて欲しいものです。
遺族としては、無理をする必要はありませんが、できる範囲でやれることは何かを検討する必要があるでしょう。くれぐれも葬儀費用をめぐって親族が揉めることのないよう、可能であれば、ご自身の葬儀について生前に考えておきたいものです。
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